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    vol.74

    スタイリスト

    chizuさん

    日本でのスタイリストのパイオニア
    食、インテリア、ジュエリー、コスメと幅広い分野の第一線で活躍されています

    日本にまだファッション以外の分野で、スタイリストという職業が確立していない時から、編集者やカメラマンからの依頼でお仕事を始められたchizuさん。40年以上のキャリアの中で、食まわり、インテリア、ジュエリー、コスメ他の雑誌、コマーシャル撮影など常に第一線で活躍していらっしゃいます。そのほかにも店舗開発、商品開発にも携わり、そして近年では、chizuさんのライフスタイルなどにも注目が集まっています。美意識が細部にまで感じられる、都心にあるアトリエでお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • chizuさん

      寝ることを大切にしています。心と体をすこやかに保つために、睡眠はしっかりとることを心がけています。

      北麓草水

      撮影のお仕事などで、生活のリズムが不規則になりがちなのではないでしょうか?
    • chizuさん

      そうですね。毎日同じ時間に就寝するというわけにはいきませんが、睡眠時間は6~7時間必ずとっています。早く家に帰り、ゆっくりできる日は10時頃に寝てしまう日もあります。6時間ぐっすり眠って、4時過ぎに目が覚めてしまったりするのですけれど。早く目覚めると、その日の準備にゆっくり時間をかけています。実は今朝も4時に目が覚めたので、撮影用にベッドリネンを出して、今日の取材の準備をしていました。

      北麓草水

      朝早くからご準備くださってありがとうございます。よい睡眠をとるために、何か工夫をされていることがあれば、教えていただけますか?
    • chizuさん

      ベッドリネンは白で揃えています。そして白は汚れるとすぐにわかる色です。体のために一番大切に考えている「眠りの環境」を、いつでも清潔に気持ちよく保ちたいので、白のリネンを使っています。白いものをいつでも白く保ち使うことは、そのものが本来持っている意味を理解して、そのものが持つ役割を全うさせることでもあります。それが快適ということなのだと思います。それからもう一つ、快適な眠りのために、パジャマはシルク素材のものにしています。贅沢やおしゃれの意味でそうしているのではないのです。ずいぶん前のことですが、ギックリ腰になってしまい、寝返りを打つのさえ辛い時がありました。そんな時に、寝具や寝まきをシルク素材にすると、体への負担が少ないと教えていただいたのです。パジャマをシルク素材に変えてみると、麻のシーツとも摩擦がなく、寝ている間の動きがとても楽になりました。その上シルクは吸湿性、放湿性に優れていて、夏は涼しく、冬は温かく快適です。洗濯をしてもすぐに乾き、たたむと小さくなるので、旅行にもおすすめです。シルクというと高価なイメージがありますが、それほど高くなく見つけられるので、お好きな色のものを見つけてぜひ試してみていただきたいと思います。

    その他に大切にしていること、習慣にしていることは何かありますか?

    • chizuさん

      毎朝煮干しの味噌汁を飲んでいます。煮干しで出汁をとり、味噌を入れて、煮干しもそのまま味噌汁の中に入れて食べてしまいます。朝起きるとまず鉄瓶でお湯を沸かし、15分ほど沸騰させたお湯をカップに注ぎ、白湯をゆっくり飲みます。朝の温かい一杯が、ゆっくりと体を目覚めさせてくれます。白湯を飲むようになって、祖父がストーブの上に鉄瓶を置いてしばらく沸騰させたお湯を白湯として、美味しそうによく飲んでいたことを思い出します。子どもの頃は、ちっともわからなかった白湯の美味しさを今では毎朝感じています。煮干しの味噌汁を飲むようになったきっかけは、手のひらに乗るくらいの量の魚を毎日食べるとよいと聞いたのがきっかけです。食事として毎日その量を取るのが難しく、煮干しも片口鰯で魚だからと思い始めてみると、美味しく続けています。私は小さめの煮干しを使っているので、5〜6匹毎朝食べています。徳島県の物産館(アンテナショップ)に行くと、様々な種類の煮干しがあり、今度はこれを試してみようと、選ぶのも楽しみです。またあまり食欲がない時は、お椀に鰹の削り節パックと梅干しを入れ、熱いお湯を注いだ簡単なお吸い物を作ることもあります。

      北麓草水

      どちらも手軽に作れて、朝の体に必要なものが補給できますね。
    • chizuさん

      その後もお茶や白湯などで、一日中水分はまめにとるようにしています。

      北麓草水

      昨年のはじめに、ご自身がモデルも務める「私をぐっと素敵に見せる大人のおしゃれのひとさじ」を上梓(じょうし)されました。最近はchizuさんのライフスタイルやファッションを特集する本も数多く出版されています。今後はどのような活動をされるご予定かお話いただけないでしょうか。
    • chizuさん

      仕事では食まわり、インテリアなどファッション以外のスタイリングや企画をしてきたので、まさか自分におしゃれについての仕事の依頼をいただくとは、考えたこともなかったのです。この本のお話をいただき、考えて周りを見回してみると、私と同じくらいの年代の方々で、少し変えることでぐっと素敵にその方の魅力が引き出せるのに、と思う方が多くいらっしゃることに気がつきました。ご自分のスタイルに私のアイディアを少し参考にしていただくことで、毎日の装いが楽しくなればと思い、お引き受けしました。いつもは撮影の裏方で仕事をしているので、自分が撮られる側になるとは思ってもみませんでした。面映ゆい(おもはゆい)気持ちはありましたが、腹を決めて全力で撮影に臨みました。私はおしゃれも大切ですが、気持ちを明るく楽しく毎日を過ごすことが、もっと大切だと思っています。センスがよい人と見られなくとも、幸せにご自分らしく毎日を過ごしていらっしゃれば、それが一番だと思うのです。誰もが唯一無二の存在で、その人しか持っていないものがあるのですから。自分らしさを大切にしていただきたいと思っています。その上で、着るものや履く靴が、体に合っていて無意識に心地よくいられることがとても大切です。毎日のことですから、体に合うものとそうでないものを身につけているのでは、心にも体にも与える影響が違ってきます。ファストファッションのシャツを選ぶ時でも、ハンガーにかけてみて服によじれがないか確認してみてください。生地を裁断する時に少しでも曲がって裁断してしまったものは、よじれが出るのです。それを着てみると体に馴染まずに、着心地が悪いのです。靴は体を支える大切なものですから、ご自分の足にフィットしているものを選んでいただきたいと思います。履きたいデザインの靴が、心地よく履けると嬉しいですね。今後はそのような商品づくりのお手伝いもしていきたいと思っています。

    どんなことでも面白がって、常に好奇心を持ち続けているchizuさんの瞳はキラキラと輝き、その温かな笑顔は相手を思いやるお人柄を表しています。どんな時に一番喜びを感じてときめきますか?と伺うと、旅先や街中で、素敵なものを見つけて、直感的にあの人にぴったり!と家族や友達の顔が浮かんだ時。という答えでした。特別な記念日でなくても、そんなピンときたものを大切な人にプレゼントすることが大好きだそうです。ご家族や親しい方への深い愛情や、お仕事に対しての責任感と情熱、ものと向き合うお仕事の中で、顔は見えなくとも、その物の奥にいる人たちへの尊敬と誠実さがお話の端々から感じられました。ありがとうございます。