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    vol.85

    うたとライヤー/手しごと作家

    山下りかさん

    ライヤーの演奏活動とレッスン、季節や自然を感じさせる作品を制作。

    80年代から90年代に、「オリーブ少女」という言葉を生んだ雑誌オリーブ。山下さんは、スタイリストとして時代の先端で活躍されました。その後渡米し、子育てをきっかけにシュタイナー教育と出会い、ご自身も自然素材を使った手しごとや、ライアーの演奏に取り組まれるようになりました。お子さんが成人され、子育てを終えられた山下さんの日々の暮らしについて、お話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 山下さん

      ライアーを弾くことが毎日の習慣です。外に出かける用事のない日は、一日中弾いている日もあります。今はライアーの演奏活動をしているので、午前中は練習の時間に充てるようにしています。

      北麓草水

      こちらにある小さな竪琴がライアーですね。ライアーとはどんな楽器なのか、また山下さんがライアーと出会ったきっかけがあれば、教えていただけますか?
    • 山下さん

      ライアーは1920年代につくられた比較的新しい楽器です。子どもたちの心身の治療を目的としてつくられた楽器で、様々な障害を持つ子どもたちでも、安心して音楽を楽しめるように、工夫してつくられた楽器です。出会いは子育て中に、楽しみでコーラスのグループに加わりました。思い返せば、私は中学生から高校生の間、声楽を習っていたこともあり、音楽や歌うことが大好きでした。東京で学校に通い、その後仕事をするうちに、音楽から遠ざかっていました。子育て中に少し自分の時間をつくれるようになった時に、自然と音楽に気持ちが向かったのかもしれません。そして、コーラスの先生から勧められたことがきっかけで、ライアーを演奏するようになりました。

      北麓草水

      初めて生で音を聴かせていただきましたが、とても心安らぐやさしい音ですね。
    • 山下さん

      ライアーは響きを感じる楽器です。音を出した後の響きの広がりを感じてもらえたら嬉しいです。私も奏でることで心と体を解放し、音の響きと自分の心と体を共鳴させているのだと思います。音を出した後に、その音を手放すと音が空間に自由に広がっていくのを感じます。まるで子育てと同じだなと思ってしまいます。

      北麓草水

      自分のできること、役割を果たしたら潔く手放す。音や子育て以外にも通じるお話ですね。

    その他に大切にしていること、習慣としていることはありますか?

    • 山下さん

      自分で使うものは自分でつくることを大切にしています。小さい頃から、手を動かして何かをつくることが好きでした。古い記憶に残っているものでは、敬老の日に曽祖母にプレゼントした小物入れです。空き缶に生地やレースなどを貼ってつくったもので、幼心にとても素敵によくできたと思ったことを覚えています。文化服装学院で学んでいた時も、洋服を始め、いろいろなものをつくりました。子どもたちが通った学校では、手を使って何かをつくることをとても大切にしていたので、私自身が子どもたちと一緒に夢中になって、様々なものをつくるようになりました。

      北麓草水

      暮らしの中でどのようなものを手づくりされているのか、教えていただけますか?
    • 山下さん

      食べるものだと、味噌、梅干しは毎年手づくりしています。家族も口に合うのか、喜んで食べてくれるので、毎年欠かさずにつくり続けています。梅干しを漬けるときに入れる赤紫蘇を干して、ゆかりもつくっています。赤紫蘇の葉を一枚一枚広げて干すとパリパリに乾いて、細かく綺麗なゆかりができます。

      北麓草水

      とても手間をかけていらっしゃるのですね。
    • 山下さん

      最初はクシャクシャのままで干していたのですが、しっかり乾燥しないので、広げて干してみました。一枚一枚葉を広げて並べるので、時間と手間はかかるのですが、仕上がりが細かくおいしくできるのです。試行錯誤して実践することを面白く感じています。

      北麓草水

      お部屋を見渡しても、椅子の座面の小さなクッションや、毛糸で編んだお人形など、手づくりのものが色々ありますね。
    • 山下さん

      クッションは座布団を分解して、棉を薄く裂いて、小さくつくり変えました。羊毛は原毛を丸めて小鳥をつくったり、毛糸にして編み物をしたり、自然の素材を扱って、その素材の持つ特徴を体で感じることを大切にしています。それからミツロウキャンドルも手づくりしています。子どもたちが小さかった頃は、絵本の読み聞かせやお話の時間に火を灯していました。今でも夕食の時や、自分一人になれる朝の静かな時間に灯しています。火を消した後にやさしい香りが残って、部屋に戻った時にその香りを感じるとほっとします。

    山下さんのゆったりとした語り口でお話を伺っていると、日常の流れとは別の場所にいるような気持ちになりました。音の響きの中に想像力を膨らませ、自然の素材の香りや感触に喜びを感じる。慌ただしい心では見逃してしまうような繊細で微かな輝きを、日々の中で大切にされている山下さんの暮らしは、とても豊かなものに感じました。それぞれのライフステージで、自分の役割を果たしながら夢中になれるものに出会い、それを自分の生きる糧にしてこられたお話は、しなやかで強く生きる大人の女性を感じました。クリスマスには、鎌倉での演奏会が開催されます。詳しくは、山下さんのインスタグラムをご覧ください。ありがとうございました。