• オンラインストア
  • お店のご案内
  • みんなの習慣

    vol.130

    株式会社AIM / AIM Brew LAB.

    西村純一さん

    ご登場いただく西村純一さんは、7年前に千葉県から山梨県富士河口湖町に移住されました。移住前からのお仕事であるホームページの制作に加え、現在は動画の撮影編集から広告など、クライアントの販促活動を総合的にプロデュースされています。また、先頃発泡酒の製造許可を取得され、クラフトビール事業も本格化されました。それらのきっかけには人とのご縁、つながりがあるといいます。今回は稼働間近のビール工房にお邪魔して、西村さんの気負いのない日常について伺いました。

    日々暮らすなかで習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 西村さん

      あまり意識したことはないのですが、強いて言うなら、プライベートと仕事の区別をほとんどつけないことかもしれません。ホームページをつくるっていう仕事は「ワクワクを届けること」だと思っているので、遊びと分ける必要を感じないんです。だから「仕事で疲れる」ということもあまりなくて。疲れたとしても、仕事疲れなのか遊び疲れなのか、よくわからない感覚ですね。

      北麓草水

      ここ富士河口湖町の西湖のほとりに移住されてきてからでしょうか。
    • 西村さん

      そうかもしれません。移住してきてから、仕事のやり方が変わりましたから。以前は千葉や東京で仕事をしていましたが、ホームページの制作会社は山ほどあるんです。仕事をいただいたとしても、代理店が間に入って、僕たちは間接的にホームページを制作する、ということがかなり多かった。お客様と全然接することなくホームページだけつくるんですね。そうなるとつくった後も当然かかわりがありません。一緒にホームページを育てて、そこからお客様を呼べて、事業がうまくいって、といったことを共有できなかったんです。

      こちらに移住してきて、それがガラッと変わりました。まずホームページの制作に必要な写真とか動画、それらを外注するとお客様の負担が大きくなってしまうので、自前で撮れるようにしたんです。色々やり出したら面白くてはまってしまい、いまはドローンも使うようになりました。お客様は、以前からお世話になっているこの町の税理士さんに始まり、その方が焼肉屋さんや、スポーツジムとか、「ホームページをつくりたい」という方たちとつないでくれて。少しずつ「顔の見える仕事」ができるようになったらそれがおもしろくて、公私の区別をつける必要がなくなったのかもしれないです。

      北麓草水

      いまは移住される方も少なくありませんが、西村さんの移住の決め手はどのようなことでしたか。
    • 西村さん

      お世話になっている税理士さんが、ただ単に経理の処理をしてくれるだけではなくて、お客様同士、人と人をつなげるようなことを積極的にしてくれる方なんです。移住のきっかけもこの方で、「あ、この人おもしろそう」と思って、お世話になるつもりで移住を決めました。

      最初に来たときは寒かったなぁ。12月に来ちゃったんです。気温がマイナス10何℃にまでなった年で、命の危機を感じるくらい寒かったですね。まだ親しい人もほとんどいなかったし。そんなことで、税理士さんのつながりだけじゃなくて、自分でも広げて行こうと思って、町役場に飛び込んで「富士山暮らし応援隊に入れてください」って言ったんです。役場の職員さんと民間の方たちがつくっているグループで、ボクを移住先の内覧に案内してくれたのも応援隊の方でした。応援隊に入ったらネットワークが広がればいいな、と思っていたんですが。

      北麓草水

      そうはならなかったということですか?
    • 西村さん

      いえ、その逆で。応援隊のメンバーから「こっちのグループに来てくれ」、そこに行ったら別の人から「こっちの団体にも来てくれ」「あっちの団体にも行ってくれ」という感じになって。ありがたいことにたくさん声をかけてもらえました。

      今も応援隊は続けていて、そのほか「まちフェス」というイベントの実行委員会にもいます。もうひとつ、「まちづくりワークショップ」は、例えば山に登ったり町を歩いたりしながら、「このへんの標識が壊れていますよ」って役場に連絡したりする、そういう団体にも入っています。自分でも理由はわからないのですが、人とのご縁には本当に恵まれていますね。
      (和やかに話される西村さんを前に、きっとこのお人柄がお相手を惹きつけ、応援したいという気持ちにさせるのだろうと思いました)

    その他に大切にしていること、習慣にしていることはありますか?

    • 西村さん

      ストレッチは毎日、絶対にやっています。何もしないでいると身体が硬く、バキバキになるんです。デザインの仕事が詰まっていると、朝から晩まで、ずっとパソコンの前っていうこともザラですから。ほかにも散歩かジョギングか、西湖一周サイクリングか。西湖一周がちょうど10キロなんです。ほぼアップダウンもないので、めちゃくちゃちょうどいい。走るとちょっとしんどいんですけど、自転車だと30分くらいで一周、ゆっくりこいでも30分なんです。

      初夏からはサップも再開します。湖畔からサップで湖上に出て、トレーニングというか身体を動かします。西湖の真ん中のあたりまでこいでいって、足おろして座って。板の上でひっくり返って横になって、ずーっとボーっとするのも好きです。

      でも、これからビールづくりが始まると、かなりハードに身体を動かすことになるんです。25kgの麦芽を6袋、持ち上げたりするので。全部で150kgの麦芽を粉々にするために機械に入れて、粉々になったらタンクに入れて糖化して、というような重労働がこれからは月に数回ありますから。

      北麓草水

      ホームページの制作からビールづくりへと、ものすごい跳躍ですね。
    • 西村さん

      移住してきた7年前、ぼんやりですけれど、こういう環境にいればきっと何か新しいことが始まる、というワクワク感がありました。そして、自分がコーヒーやビールが好きなものですから、今の仕事をリタイアしておじいちゃんになったら、コーヒーかビールで暮らせたらなぁって思っていました。

      北麓草水

      リタイア後の夢をかなり早く実現されましたね。
    • 西村さん

      きっかけはコロナ禍だったんです。弊社のお客様には飲食店が多いのですが、コロナ禍でかなり苦しんでおられる状況を目の当たりにしました。その時「クラフトビールをつくることができたら、飲食店や宿泊施設やキャンプ場に置いていただけて、みんなに喜んでもらえるようになるんじゃないか」と思いました。当時の補助金を活用しながら、つくり方を教わりに広島まで通ったり、発泡酒の製造許可を取ったり、費用をねん出したり、3年がかりのプロジェクトになりました。

      ゆくゆくはホップの栽培から、町を巻き込んでやってみたいです。自宅の庭にテスト的に、苗を1本だけ植えてみたのですが、ほったらかしでも冬越して、ちゃんと育ってくれています。このあたりは畑の作物がシカに食害されてしまうので、みんなネットで厳重に囲っています。でも、ウチの庭のホップなんて6メートルとか伸びちゃったので、シカには届きません。ホップは花も実も香りが強烈なので、そもそもシカはまったく好まないんです。ホップはこのあたりに適した作物なんじゃないかと思っています。ただひとつ問題があって、収穫するときにはホップがすごく伸びているので、めっちゃ高所作業になるんです。そこさえ何とかなれば、耕作放棄された畑で、おじいちゃんやおばあちゃんが元気に活躍してくれる。そして、「富士河口湖町で獲れたホップのビール」ができる。それが新しい夢になっています。

    「本当はめっちゃ人見知りなんです」とおっしゃる西村さん。それを感じさせないほど自然体で、ニコニコとお話を聞かせてくださいました。クラフトビールの販売が始まったらまた工房にお邪魔したいと思います。今回はありがとうございました。(2024年7月22日公開)