• オンラインストア
  • お店のご案内
  • みんなの習慣

    vol.132

    一般社団法人 Fogin(フォグイン)

    並河杏奈さん

    今回ご登場いただくのは編集者でライターでもある並河杏奈さん。加えて、京都の亀岡市で地域のツアーガイドやプログラム企画のコーディネート、まちづくりと呼ばれる分野のお仕事をされている方です。並河さんのツアーは単なる観光ではなく、地域の文化やものづくりに触れ、採れたてのおいしい食べ物を味わい、心豊かな時間を見つける旅。目下、泊まれるセレクトショップを亀岡駅前にオープンする準備もされているそう。色々なことに前向きに取り組む並河さん。湧き出るエネルギーの源を知りたくて、お話を聞かせていただきました。

    日々暮らすなかで習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 並河杏奈さん

      朝一番に窓を開けることです。外の空気が入って来る瞬間がとても好きです。寒い寒い冬の朝は、ツンと冷たい風が頬に当たるのですが、それでもまずは窓を開けたくなりますね。あとは散歩やジョギング。週に1~2回、日が暮れる少し前に近所を歩いたり走ったり。夕日が山に向かって落ちていって、「ああ、日が落ちたなぁ」と思っていると、最後にもう1回だけ、赤く空だけを染める。そんな瞬間があります。落ちきったあとの、もう一度燃えるような、そういう赤い空と夜のグラデーションがとても印象的です。

      北麓草水

      亀岡市は自然豊かなところだそうですね。
    • 並河杏奈さん

      ジョギングの最中には、ウリ坊ってわかりますか? イノシシの子どもとすれ違ったときは驚きました。ウリ坊が走っていれば、キジも田畑を歩いている。鹿やキツネ、野うさぎなんかもいます。

      北麓草水

      それがイヤになったり、街なかで暮らしたいと思ったりしたことはなかったのですか。
    • 並河杏奈さん

      高校は京都市内に、大学は大阪に通っていたのですが、その帰り道、亀岡に近づくにつれ、だんだんと落ち着いた風景が見えてくるんです。山に囲まれているのに空が広く、季節の変わり目には春めいたり、秋めいたりする。自然の移ろいを感じながら過ごすうちに「ああ、ここが帰る場所なんやなぁ」と思える、ホッとできる場所に変わっていきました。ご近所さんも「お帰りぃ」って言ってくれます。街なかは頑張るところ、亀岡は帰って来るところ。私にとって亀岡は、好きかと言われると正直わかりませんが(笑)、嫌いになる瞬間はなかったかもしれません。

      北麓草水

      並河さんの体力と気力の源は、亀岡での暮らしも関係がありそうですね。
    • 並河杏奈さん

      あるかもしれないですね。小さい頃から遊び場は自然のなかか、祖父母のいる牛小屋。今となってみればワイルドなことをしていました。山に登って、大きく漕いだらそのまま森に飛んでいきそうなブランコに乗ったり、中洲に秘密基地をつくったり。小学校からはバスケットボールを始めて大学まで続けました。それで基礎的な体力がついたのだと思います。

      とはいうものの、年齢を重ねるにつれ、ここからどのように体力を維持していこうか、悩ましく思うようになりました。ジョギングをすることもあるのですが、仕事が忙しくなるとなかなか走れなくて。日々のなかに、いいかたちで運動を取り入れたい、と思っているところです。せっかく亀岡にいるので、わざわざジムに行くというのではなく、身近な畑仕事をするとか。身体の動かし方を考えていけるといいな、と思っています。ただ「毎日やらなくてはいけない」にしてしまうと、たぶんしんどいというか、続かないと思うんですね。義務にはしないで、軽くストレッチをしたり、短い時間で筋トレをしたり。やりたいときにやるくらいで、長く続けられたらと思います。100歳まで元気でいたいですからね。

      北麓草水

      100歳ですか?!
    • 並河杏奈さん

      はい。100年間のうちに変わっていく物事や社会を見てみたいんです。それに、100歳の自分は何をしているんだろうと。たぶん、思うようには動けなくなっていることもあると思うのですが、それを受け入れたうえで、100歳の自分にしかできないことって何だろうと、すごく興味があります。

    その他に大切にしていること、習慣にしていることはありますか?

    • 並河杏奈さん

      旅に出ることですね。仕事は大好きですが暮らしとも密接なので、例えば「いまはちょっとだけ一人で集中したいなぁ」「日常とは違う時間を過ごしたかったなぁ」ということもあるんですね。

      北麓草水

      並河さんのお仕事は、毎日のオン・オフの切り替えが難しそうです。
    • 並河杏奈さん

      窓を開けたり、散歩をしたり、日常の何気ないことで身体的なリセットはできます。ぐっすり眠る、白湯を飲む、ごはんを食べるのも大切なリセットですね。ただ「あ、旅に出たい」とポッと思うことがあるんです。いまの場所から物理的に離れることで、思考の整理ができるのだと思います。ほかにも、新しく何かをインプットしたいときや、今後に向けたインスピレーションや仕事へのつながりを見つけに、1年に1回か半年に1回、国内外のどこかに行くようにしています。

      でも、仕事と暮らしが隣り合わせというのは、いいこともたくさんあるんですよ。私の場合、経験したことや見聞きしたことを別の何かに活かしていける。記事を書くこともツアーガイドも、自分のなかの引き出しがどんどん増えていきます。引き出しは好奇心の扉のようなもので、人とのコミュニケーションが楽しくなり、相手の方と過ごす「時間の価値」みたいなものが高まるような気がします。

      北麓草水

      時間の価値が高まる、素敵な言葉ですね。人との接し方やコミュニケーションの築き方で心がけているのはどんなことですか。
    • 並河杏奈さん

      自分から話しかけることです。相手が誰でも、なるべく先に自分がオープンになる。心を開いて、話しやすい状況を自分からつくっていくことを大切にしています。亀岡に来てくださった訪日旅行者の方だったら「どうやって亀岡を探したの?」とか、「このあとの予定は?」と、色々な質問を投げかける。その人が答えてくれたら、また次のコミュニケーションが生まれる、その繰り返しです。けれど、無理にわかり合おうとはしないことも大事。相手とよいコミュニケーションができるのは、その人との距離がうまく保てているときだと思います。

    並河さんが準備中の泊まれるセレクトショップは、これから改修を経てプレオープンを迎えます。築60年を超える民家のリノベーションなど、準備中は不安になることもあるそうです。でも「それ以上に、なんやろ、楽しい場所になるであろうし、亀岡に来てくれはる人に『来年オープンするよ』って言うと、すごく喜んでくれて。喜んでくれる人のことばかり考えていたら、なんとか乗り越えられそうです」とおだやかな表情を見せてくださいました。ショップの名前は「リバー!リバー!リバー! souvenirs & BnB」。北麓草水もオープンを楽しみにしています。このたびはありがとうございました。(2025年1月27日公開)