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    vol.68

    ワイルドツリー代表

    平賀裕子さん

    ミツロウキャンドルの輸入・販売
    地元の魅力を発信する多彩な活動を展開

    木曽山脈(中央アルプス)と赤石山脈(南アルプス)の間に位置する信州伊那谷とよばれる土地は、本州のほぼ中央に位置することから、古くから東日本と西日本をつなぐ要所でした。JR伊那市駅前の歴史を感じる商店街の中に、平賀さんのお店があります。ミツロウキャンドルをはじめ、自然素材の衣類や食料品がそろうお店には、いつも地元の人たちが集まっています。さまざまなことに関わりを持って活動をされている平賀さんに、日々の習慣について、大切なことについてお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 平賀さん

      暮らしの中で使うもの、身につけるものや、食べるものはできるだけ、自然に近いものを選ぶように心がけています。そうすることによって、毎日の暮らしの中でも、自然の中にいるような、自然との一体感を感じて生活できると思います。

      北麓草水

      自然に近いものを選ぶようになったきっかけがあれば、教えていただけますか?
    • 平賀さん

      家族のアレルギー症状を改善したいと思い、植物療法やハーブ、アロマオイルについて学んでいる中で、ティーツリーの精油に出会いました。オーストラリア原産のティーツリーの木を見てみたい、という思いでオーストラリアに行き、そこでエコビレッジに住んでいる友人の紹介で、ビーキーパー(養蜂家)からミツロウキャンドル職人になったジェフリーさんと出会いました。そして、ジェフリーさんからミツバチの素晴らしさを学び、オーストラリアの自然や風土の素晴らしさを知ったのです。子どもを育てる教育への考え方にも感銘を受け、それらを日本の人に伝えたいと思いました。

      北麓草水

      暮らしや食べ物を自然に近いもので整えられるようになって、何か変化はありますか?
    • 平賀さん

      自分自身が自然でいられるようになったと思います。オーストラリアでミツロウキャンドルにたまたま出会って、それを仕事として扱うようになり、この場所でお店を開くことになったのも、たまたまの出会いからです。自分に正直に自然体でいることで、たまたまの出会いが楽しい方向に繋がっていくように思います。自分にとって何が大切なのか、何が自然で、何が不自然なのかを判断するのは、自分の感性しかないと思っています。自分にとって大切なものを感じる力は、自然の中にでかけて、全身で自然を感じたり、新鮮で生命力にあふれた野菜を食べたり、肌触りのよい自然素材の布を身につけたり、そんな毎日の積み重ねでしか、その力は養えないと思っています。理屈ではなく感覚を育むものを、この店で提供したいと考えています。そして、自分の暮らしもそうでありたいと思っています。

      北麓草水

      ミツロウキャンドルの魅力を教えていただけますか?
    • 平賀さん

      ミツロウは蜜蜂が巣をつくるために、体の中でつくり出す蝋のことです。蜜蜂が花の蜜を体の中で蜂蜜につくり替える時に、おなかの方からは蝋がでてきます。そして蜜蜂はそのミツロウを使い、触覚を定規にして、あのきれいな六角形の巣をつくります。キャンドルが燃える時に空気中に広がるその成分を、呼吸や皮膚を通して私たちは吸収しています。着色や混ざり物のないミツロウキャンドルは100%ナチュラルです。またミツロウの持つ温かみのある黄色は、火を灯すと夕日のようなオレンジ色となり、広がっていきます。蛍光灯やLEDライトの下で過ごすことが多いと思いますが、ミツロウキャンドルのオレンジ系の低い照度の光は、心を静め、心地よい眠りに誘うと言われています。都会のマンションの一室でも、野の花を一輪飾るように、ミツロウキャンドルを灯してみてください。キャンドルの炎のある時間の流れは、草木の育つ時間や、子どもが育つ時間の流れ、本来の時間の流れを思い出させてくれるように感じます。

    その他に大切にしていること、習慣にしていることは何かありますか?

    • 平賀さん

      朝、お風呂に長めに入るようにしています。その時にミツロウキャンドルを灯します。ゆっくりお風呂に入っていると、心と体がリラックスして、自分が自然でいられる状態に戻れるように感じます。長く入っていると、自分の体が冷えていることに気がつくことがあるのですが、そんな時は体が芯から温まるまで、時間を気にせずに長く湯船に入っていることもあります。自分ではそれを「ボヤボヤコース」と名づけていて、お風呂の中でぼんやり、ただ気持ちよく過ごします。キャンドルを灯して時間が経つのを忘れて、その時を味わえると幸せを感じるのです。キャンドルを灯していると、時間の流れが変わるように思います。

      北麓草水

      時間の流れが変わるというのは、どのようなことなのでしょうか?
    • 平賀さん

      たとえば、先にある時間を決めて、何時までにと考えて行動をしている時は、あと何時間、あと何分と時間が減って行く感じがすると思います。

      北麓草水

      そうですね。一日の中では、そのような時間の認識で過ごしているのがほとんどです。家を出るのにあと何分。12時までにこれを仕上げよう。3時に待ち合わせだからあと何時間ある、と時間は減っていくばかりです。
    • 平賀さん

      時計で計る時間を意識していると、時間は引き算になってしまいます。でも本来の時間は一瞬一瞬を積み上げていって、一時間という時間になり、一瞬一瞬に向き合っていると、時間は永遠です。そして時間との向き合い方で、時間は深くもなると思うのです。一日の中の少しの時間でも、そのような時間を積み上げていきたいと思っています。キャンドルを灯してみると、そんな時間に出会えると思います。

      北麓草水

      平賀さんは地域の活動も積極的に行なわれていらっしゃいますね。
    • 平賀さん

      この伊那に暮らす人たちは、丁寧な暮らしやものづくりをしている人がとても多く、それを伝えたいと思っています。大きな目標を立ててそれを目指すのではなく、たまたま出会った人と目の前のことを誠実にやっていく、その連続でいろいろなことに関わるようになりました。毎年6月から10月の最終日曜日は、「いなまち朝マルシェ」を開催しています。伊那谷の自然をいただきます、をテーマに、美味しいものがたくさん集まり、街の人も楽しみに集まります。伊那にいらっしゃることがあれば、是非のぞいてみてください。ワイルドツリーのお店に立ち寄って、楽しい情報を集めて、街歩きを楽しんでいただけたら嬉しいです。

    取材で伺ったのは5月の終わりで、駅前・公園・商店街・裏通り、街中でさまざまな種類のバラが満開で、街中がバラ園のようでした。そのバラは街の人たちが、みんなで大切に育てているそうです。街を行き交う人たちが、バラを見ながら楽しそうに話をしていました。写真を撮る私にも地元の人が話かけてくれて、その美しさを分かち合いました。「となりにいる人と屈託なく笑って、やさしい言葉をかけあって、その中で日々暮らせる幸せを感じる。」と平賀さんがお話くださった言葉を実感して、温かい気持ちになりました。ありがとうございました。